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グラシア・ブラザーズ・ライフ♪ #7.5

2008年05月27日 21:51

#7.5
その日、彼女は朝から憂鬱だった。

「はぁあ…ふぃふにゅ~にゅ~」

ここは、管理局中央医療センター。時空管理局が運営する、特級医療施設である。

そしてこの医療センターの医師である彼女は、センター奥地に設けられた、自らの執務室へ続く廊下を気だるそうに歩いている。寝起きでまだ脳が覚醒してないだろう。不機嫌顔で目を細め、意味不明のうめき声を洩らしながら、口に咥えたシガレットチョコを上下に揺らしている。

「んっ…?」

ふとガラス張りの天井より太陽の眩しさを感じ、見上げた際に飛び込んできた、突き抜けるような青空に小さく溜息をついた。

「憎たらしい程の快晴…人の気も知らないで…バーカ…太陽さんのバーカ……………………ははっ…」

意味も無い独り言を呟く自分がやけに滑稽に感じ、自虐的な笑いが零れた。
『こりゃ駄目だ』と内心で呟きつつも、今日限りは休むわけには行かない。太陽の光を浴び、眩しく銀色に光る長髪と、真っ白い純白の白衣を靡かせながら彼女は、再び歩き始める。

「プライマリー主任!お早う御座います!」
「はい…おはよう。」
「フィー先輩~おはよ~きょうも可愛いっすねぇ~」
「はいよ~…おーはよ。」
「うぃ~す~ちびっ子」
「黙れ、糞ジジイ…」

歩みを進めるにつれ増える挨拶を軽く返す。なんか色々言われた気がするが、今はまだウォームアップ途中なので余り気にしない。もっとも最後のオヤジには、後でシガレットチョコ100本程、口にぶち込んでやろうと心に誓ったところだが…

時空管理局中央医療センター 第3統括主任『シルフィ・プライマリー』

それが彼女の肩書きとその名前。四つのエリアに分かれている中央医療センターの一つ、通称『第三エリア』を束ねる若き指導者。その類稀な記憶能力、鬼才と称されるほどの斬新な医療センスと、ずば抜けた医療技術をもつ彼女は、30という若さで、一エリアの統括主任にまで上り詰めた。

歩いただけで、靡く銀色の長髪にライトグリーンの瞳。実年齢を感じさせないほどの童顔。悪あがきと回りから称されるシガレットチョコを常時咥え続け、全身黒尽くめの衣服に真っ白い白衣を着ることを好む。個性の塊の様な人物だ。

「フィー先生~!!」
「んっ?」

背後から名前を呼ばれ振り返る。するとそこには、ここ数年連れ添ったパートナーとも呼べる看護婦が、医療デバイスを抱えながら走ってくる。なにやら、顔凄いことになっている。例えるならば、ガスの元栓を閉め忘れた主婦がそのことを思い出した時にあんな感じの表情になるのではないだろうか?

「あら?おはよう、サラ。どうしたの?そんなに慌て…」
「ワザとやってんのか!?このチビ助ぇ!!」
「んぎゅっ!」

何時も子供扱いされる彼女に向かって、大人の淑女っぽい(そんな事を思う時点で既に子供)振る舞いで対応しようとした私に対して、彼女は勢いそのままに何処からともなく取り出したカルテボードで殴りかかってきた。
い…痛い。殴られた頭部が物凄く痛い…。ま、おかげで完全に目が覚めた…。

「ふにゃぁああ!?ぶ、ぶったぁああ!サラがぶったぁああ!?あぁああ!しかも新しい『タバチョコ』(←シルフィが呼ぶシガレットチョコの略称:略でもなんでもないが…)があぁあ!?」
「うっさいこの不良ちびっ子医師!15分遅刻!もう患者さんと付き添いの方待ってますよ!?」
「ち、ちびっ子言うな!!だっ、大体サラだって…」
「プライマリーさん?」
「…!?」

突如脳が、体が、その声に反応して硬直する。

出来る事ならば…その稟とした声を聞きたくなかった…。
出来る事ならば…浮かべているであろう優しげな笑顔を見たくなかった…。
出来る事ならば…………二度と貴方に会いたくなかった…。

貴方を見るたびに、また、どうしようもない現実を突きつけられる事が怖いから…。
また…他の全てをかなぐり捨てて貴方に詰め寄ってしまいそうになるから…。

「今月も宜しくお願いしますね。プライマリー先生。」

表所がこわばっているのが分る。駄目だ、飲み込め。今の私の顔は実に不味い。落ち着け…先ずはそれからだ…。
落ち着け落ち着け落ち着け落ち着け落ち着け落ち着け落ち着け落ち着け落ち着け落ち着け落ち着け落ち着け落ち着け落ち着け落ち着け落ち着け落ち着け落ち着け落ち着け落ち着け落ち着け落ち着け…

「先生?」
「………いえ、なんでもありません。」

いつまでも振り向かない私に向かって疑問を抱いたのか、彼女は怪訝そうな声を上げる。
だが、その声を引き金に、私は完全に切り替わる。『一人の女』から『管理局医療センター統括医師』へ。そしてこの数年で身に付けた営業スマイルを浮かべ、優雅に振り返り彼女と顔を合わせる…。

「どうも、定期健診お疲れ様です。すいません、此方の事情で診察日を指定してしまっただけでなく遅刻などしてしまいまして…」

問題ないと思う。初めの頃は、言葉の端々にいろんな感情をのせて彼女に接してしまったが流石に慣れた。感情を押し殺す事に…。

「それでは、私の執務室のほうまで一緒に行きましょうか?」
「はい、では重ねて、今月も宜しくお願いします。プライマリー先生。」

一人の女性が立っていた、淡いブルーのカーデガンと真っ白いストールを身に纏った緑髪の『温厚』という言葉が服を着て歩いている様な、そんな女性。

「はい、こちらこそ…リンディ・ハラオウンさん…」

問題ない。本当に私は、そう思っていた。だからその時は気付けなかった。彼女の名を呟く私の笑顔を見て、サラが苦渋の表情を浮かべている事に…私はその日、最後まで気付かなかった…。



聖王教会騎士及び時空管理局理事官『カリム・グラシア』
古代ベルカ式魔法継承者でもある彼女は、その光輝くブロンドヘアーを象徴とすることから、『金色の裁断者』、『継承を受けし女神』、『金髪暴走列車』等の二つ名で呼ばれている。

彼女と出会ったのは…約八年前。あの頃は…確か、リインが生まれて直ぐ、教会騎士団の派遣任務が始まりだった。それも、恐らく考えうる限りでは、『最悪』に分類される出会いだったのではなかろうか…?

『い、痛い…な、なんですかあなた?』
『あかん…あかんよお姉さん…。私の前でそんな天然ボケを…そんなポワポワしとったら、世を巣う悪人さんにつけ込まれ放題やで?これから、寝る前に、『アタイは魚座の女…アタイに触れると凍傷になるよ!』と10回は唱えて、その天然ポワポワオーラを捨て去る事をお勧めや!』

何分昔の事なので、細部までは思い出せないが、目の前に現れた女性の、その天然っぷりに、私の中の『自制心』が粉々に砕かれ、秘密道具『ツッコミ用巨大ハリセン』で、盛大にツッコミ入れてしまったことは覚えている。あぁ、あと…その後の再会で、私の騎士であるシグナムと共に、人生で初めての『土下座』をしたことも、まだ記憶から抹消されていないようだ…。

「はやて…貴方は、あの子の何を見てるの?いえ…違うわね…貴方はティスを通して、その向こう側に何を見て、何を望んでるの?」

立場的には、仕事上直属の上司、敬愛すべき先輩といった所だが、どちらかと言えば『いつも優しいお姉ちゃん』といったイメージの方が強い。穏やかな笑顔を浮かべ、私に微笑みかけてくれる『優しい姉』。

それ故に…

「何時までも、自分を偽り続ける事なんて出来ないのよ…はやて。結論から言いましょう…」

その鋭く冷たい視線が…突き放された言葉が…

「私、カリム・グラシアの名においてここに宣言いたします…今の貴方に、ティスを…大事な私の弟を、任せる事は出来ません。」

他でもない、私に向けられているという事実を、信じたくなかった…。
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