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グラシア・ブラザーズ・ライフ♪ #2

2008年05月27日 21:39

#2
「…アっ!ティアっ!」
「…………………………んっ………」

この数年聞き慣れた声と共に、体が揺らされているのが判る。
さざ波の様なそれと共に、窓から差し込む朝日が、薄く開かれた瞳を刺激し、浅い目覚めを誘う。

「…んっ………あ…さっ?」

時期に瞳が朝日の明るさに慣れ、本格的な目覚めが訪れる。
悪くない目覚めだ。
違和感の残る瞳を無意識に擦り、反動を付けて体を起こす。
時計を見ると早朝の4時53分。通常より少々早い起床だ。

「んっ…んっーーーんっ。ふぅ~、おはよ~スバル~」
「はいっ!おはよっ…今日もいい天気だよ~。ほらっ!」

朝の訓練に向かうべく、身支度を続けながら窓の外へ視線を向けるスバル。

「また、『朝の体操』?よくやるわねぇ…ふぁっ…」
「うんっ!まぁ、毎朝の日課だからねぇ~特別大変とかは思ってないよ~?…………っ…」
「んっ?………………んっ―――――っと…?なによ?急に後ろ向いて…」

ベッドから起き上がり体を伸ばす。体の各所がギシギシと妙な音を立てているような錯覚に陥る。連日の厳しい、だが、充実した訓練の疲れが完全に取れはいないのだろう。実際、今日の眠りはいつものそれと比べ深かったように思える。

 そんな事を思いながら、共同洗面所へ洗顔と歯磨きの為に部屋を出ようとしたのだが、何故かスバルが突如、物凄い勢いで方向転換。私に背を向けたまま小刻みに震えている。腐れ縁と称しても可笑しくないほどの付き合いだが、突如後ろを向いて震えだすなどの奇行に出たという記憶は少なくとも無い。

「べ、べつにぃ…っ……なんでもないよ?…っ……」
「でもっ…………………」
「いいからっ!んじゃティア!先、行ってるからね~」

「ちょ……スバル!……ったく!なんなのよっ!?」

結局そのまま、再び此方へ顔を向けることなく、静止の声を振り切ったスバル。妙に慌しかったが後を追わない訳にはいかない。無意識にでた溜息を零しつつスバルを追い、共同洗面所へ向かう。

(あっと……忘れてた…。)

部屋の出入り口まで進めた体を180度回れ右。再び室内に戻る。

実は私にも…スバルの『朝の体操』の様な、毎朝の日課が存在していた。
まぁ、スバルのそれとは違い、数秒で済んでしまう些細な日課では在るが…。

「それでも、これやらないと、一日が始まった気がしないのよね…。」

誰も聞いていないとは判っているが、無意識こぼした一人語と共に、二つ並びで置かれているデスクに近づき、片方の引き出しに手を伸ばす。目指すは四つある引き出しの内の一番上の引き出し。そこだけが、施錠が可能であり、他人に見られたくない物、俗に言う『乙女の秘密』の類の物を収納する為の引き出しである。

(術式構築…解除コード作成…ロック…解除っと)

施錠に手を当て、解除コードを構築する。オレンジ色が一瞬輝き、その後、小さな金属音と共に、ロックが解かれた。

(よしっと…)

そのまま、慣れた動きで引き出しを引き、中の物を取り出す。引き出しの中に入っていたのは数枚の写真と小さな銃型デバイス。その中から二枚の写真を取り出しデスクへ並べ、姿勢を正し、写真へと向き合う形を取る。その際、寝癖や、着崩れが気になり身なりを整えるのも忘れない。

「ティーダ兄さん、みんな、おはよ…。」

丁寧に並べられた写真は二枚。左側の写真は、幼少の頃、兄と一緒に撮った写真。まだ私が10歳の頃…暴れる私に寄り添いながら、茶髪の管理局制服を纏った青年が、穏やかな笑みを浮かべている。

もう一枚、写真には、若い男女が数人が寄り添う様に映し出されている。中心で困惑顔を浮かべる白髪の少年。そして少年の左腕に満面の笑みを浮かべながら抱きつく同じ白髪の少女。その逆の腕を申し訳程度に抱きかかえながら、顔を赤面さてぎこちない笑顔を浮かべてるのが私…。その背後で右手のひらを頬に当て、前列の三人を微笑ましく眺める金髪の女性。その隣で白いスーツを着こなし、何気に一人だけカメラ目線の緑髪の男性。

みんな、私の家族だ。

(ずいぶん…会ってないな…。)

真っ暗だった世界から救い出してくれた人達。
一人だった私に温もりをくれた人達。
私の為に、本気で激怒し、涙を流してくれた人達。

(私の…大切で…かけがえの無い…大好きな人達…。)

こうして家族の皆に写真越しに「おはよう」を言う。それが、私の日課だ。訓練校時代から続いている日課だがこれをやらないと、一日の調子が出ないというのだから不思議である。柄じゃないと分ってはいるが、辞められないのもまた事実。辞めるつもりなど毛等ないが…。

(さてっと…)

通常ならば此れで終わりだ。実際ここ数日も、スバルの前でこの日課を実行し、その後、共に、共同洗面所へ向かい身なりを整えた。しかし、ここ数日と今朝とで決定的に違う点がある。それは、現在…私が…一人だという事…。

(チャンス…よね?…………右…左…上…下…室外……………よしっ…)

眼を閉じ、周囲の気配を伺う。実際この行為にはリスクが伴う。この行為が、衆目の元へ晒されたら、おそらく私はとんでもないことになる…ある意味で…。だからこそ、細心の注意を払う。特にスバルなんかに見られた日には…。

(消すか…)

最近激化訓練のせいか、思考がブラックに偏りがちだ…。

(おっと、前向き前向き…明るく明るくっと…。)

さて、一通り気配の洗い出しも終わり、特に問題は無い様なので、早速行動に移す。先程の引き出しの更に奥。そこにはもう一つの写真たてがある。ここまで、細心の注意を払っては見たが、実際なんてことは無い。ただ、その写真を眺めるだけ。それだけの行為だ。別に他人に見られても問題はない。

(…………ふふっ…)

眼を細め、頬が緩み、朱色に染まり、歓喜の声零れるこの乙女状態が抑圧できればの話だが…。こんな姿、誰にだって見せられない。

その写真には、先程の家族写真の中心にいた白髪の少年と、私がツーショットで映し出されていた。芝生の上に座り込む私の頭を後ろから抱き込む形で、頭の上に顎を乗せ、穏やかな笑みを浮かべている。私は私で、後ろから回された少年の腕を掴み満面の笑みでカメラ目線。恋人同士と言えなくもないポーズと雰囲気である。まぁ、実際は、遊園地なる所にて、家族旅行した際の、兄と妹の他愛のない触れ合い写真であるが。だが、それでも、青春真っ盛り少女の心の支えとしては大いに役立つ必殺アイテムとなった。

(乙女してるなぁ…私…)

緩む頬が戻らない。顔の火照りが戻らない。胸に膨らむこの幸福感がどうしても消えない…消したくない。

「おはよ…鈍感兄貴…」

写真の少年に頭を指で弾く。それだけの行為が、どうしてだが判らないが無性に楽しい。ここ数日で荒んだ心が、一気に癒された気分だ…。

「んっ…んふふふふっ…幸せ~」

次に、その写真たてごと、胸に抱きしめた。きっと正常時の私が見たら『何してんのよ私!』等と突っ込みを入れそうだが気にしない。今は、乙女モードなのだ。そんな時ぐらい、普段出来ないことをやらせてほしい。

「てぃす…どうしてるかな…」

再び写真を戻し、眺め始める。自分の中で、この少年による影響が絶大な事に、驚きと嬉しさが織り交ざった妙な気持ちになる。

「よしっ!ティスパワー充填完了!」

いつまでも緩みきった顔をしている訳にはいかない。いつもより早く起きたとは言え、準備は前倒しにして完了させないと気が済まないたちである。ここは、名残惜しいが早々にスバルを追いかけた方が無難だろう。
幸い、充填されたパワーによりあと三日は戦えそうだ。

「じゃ…また今度…ね。」

と零し、写真を引き出しに戻し、再び厳重なロックを施した。



「まぁた…派手にやったなぁ…」
「あははっ……………ご面倒かけます…。」

六課宿舎の廊下に二つの影。
一つは、SSランクの魔道騎士と同時に六課の部隊長である、八神はやて。
そしてもう一つ、年の頃は50台前半。グレーに短髪全てを手ぬぐいで覆い、各所折曲がったタバコをチビチビとふかす。魔道修繕屋のゲン・サイフォーンである。

「この宿舎の使用者リストでお前等見た瞬間に、素材を魔力抵抗マックスに変更したんだが…それで…これか……。」
「はい……………」
「しかも、これやったの…新人等なんだろ…」
「………………………………………はい…」
「……末恐ろしいとはまさにこの事だな……。でっ?此方としては、こうなった経緯とか知りたいのですが?八神部隊長殿…。」
「これ…」

力無く呟きはやては、一つのレコーダーを差し出す。中には、宿舎内に配置されている監視カメラのマイクが拾い上げた音声データが入ってた。はやてが、スイッチを押すと、そこから少女達の談話が聞こえてくる。



『えっと、あのっ!そのっ!おっ、お似合いですよ!』
『あははははははっ!キャ、キャロ!やばい!その返しツボっ!!あはははははっ!!』
『…………………………………………なに?これ?』
『えっと!右頬の“T”が凄いキュートで!左頬の“穴”凄く凛々しいです!』
『ぷっ!や、やめて!キャロ…お腹…くっ…いた…ああははっ!!』
『…………………………………………』
『えっ!?ご自分でなさったんじゃないんですか!?』
『だって、ティア幾ら揺すっても起きないんだもん!ぷっ…どう?“T”と“穴”でティアナ!あはははっ!くだらないっ!』
『こんな…こんな顔で…ティスに…』
『あ、あのスバルさん!ちょっと、ひっ、ひぃ!!わ、私はこの辺で!!エ、エリオくーん!』
『あははっ~ひぃーーーははっ…』
『…………………………………………スバル。』
『は、はひ!!』
『選択肢をあげる…衝撃…撃滅…抹殺…どれがいい?』
『ちょ…どっ、どれもヤダよ!!っていうかそれ、どっちかって言うと私のキャラなんじゃ…!?』



「……………昔のお前等のやり取り聞いてるみたいだな…」
「お恥ずかしい限りです。」
「気にすんな…これも仕事だ。まぁ、これでも可愛いほうじゃないか?まだクロ坊がいた時なんか………っと…………すまん……」
「………いえ……」
「………………まぁ、取り合えずは………」

二人は互いに向けていた視線を壁に移した。正確には、共同洗面所横の直径二メートル程に渡る大穴に向かって…。

「こいつを何とかしなきゃな…。」
「ははっ…ご面倒かけます…」

二度目の謝罪と共に漏らしたはやての笑いは、それはそれは乾きに乾ききっていたという。
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