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グラシア・ブラザーズ・ライフ♪ #5

2008年05月27日 21:46

#5
甘かった…。目の前の光景は自分の認識の甘さが引き起こしたのだ。

一体私は、彼女の何を見ていたのだろう?

十年経ったから?
自然に笑える様になったから?
執務官になったから?

そんな不確定要素で私は何を解ったつもりでいたのだろう…。

この十年間という時の流れは、長くも短くも感じられ、学業と職務で多忙を極めた日々。

志す道の違いから、小学校よりの馴染みである彼女とは、時空管理局内で、同じ所属になる事はなかったが、それでも、あちらの世界…管理外世界97番の海鳴では、ずっと一緒だった。

ずっと傍で見守っていたつもりだった…。彼女の心に負った傷は、ある意味私のせいでもあるから…。いや…違うな。そんな義務感の様な感情ではない。

友達だから。かけがえの無い友達だからこそ…。

だから、彼女が躊躇いながらも微笑んでくれた時は、泣くほど嬉しかった。
突然泣き出し、訳も解らず舞い上がる私に抱きつかれ、困惑した表情を浮かべる彼女を今でも覚えている。

「ごめん…。」

それから、彼女は頻繁に笑う様になった。執務官という職務に付き、身寄りの無い子供の母親代わりを勤め、彼女の笑みが凄く自然になっていくのを感じた。昔の様な、偽りの笑みが消えていくのを確かに感じていた。

「ごめんな…。もう言わへん…言わへんから…。だから……………」

でも、現実は違った。

結局私は、彼女の表面しか見ていなかったんだ。
何が『偽りの笑みが消えた』だ!何が『ずっと傍で見守る』だ!
何も見えてなかった!そんな自分に心底嫌気が差す!彼女の傷は、十年経った今も癒えず苦しんでいるというのに!!

「泣かないで…フェイトちゃんっ…」

抱き寄せる腕に力を込める。
彼女は、声も上げず…瞬きもしない…ただ…『微笑みながら泣いていた』。



カタカタと無機質なキーボード音を一人管制室で響かせながら、黙々とデータの解析を進める。ここ最近の活性化されたガジェットの反応。新人フォワードNEWデバイスの出力結果とリミッター状況の確認および最終調整。成長を続けるカートリッジシステムにおける解析と提案。幾ら溜まっている仕事を片付けても、次から次へ新たな仕事が舞い落ちてくる。まったくもって……………楽しい。

「んふふ~忙しいなあ~♪楽しいなぁ~♪」

無意識に出る独り言にも爛々とした響きが込められているのが解る。自分は今有意義な時間を過ごしているのだ、なんか文句あるか!?とその顔が語っている。生粋のメカオタクなのだと改めて自分を再認識。実際はラボでやった方が、速度、密度共に上なのだが、今は管制室での通信担当時間なので仕方ない。 

『コンタクト願います。こちら、聖王協会…』
「おりょ?」

『ピッー』という甲高い機械音が突如耳に入り、視線を向けると、モニター通信受信を表す『受信/応答』ランプが緑の点灯を見せている。

「よしっ…ちょっと中断してっと…」

余り褒められた事ではないが、今まで操作していた端末放置し、一つ隣の端末へ移動する。通信を受理。現在、空いてるウィンドウラインは18番と23番…18番にラインを繋ぎ自らのIDコードとパスワードを入力。機密漏洩や自己責任の為とはいえ、昔に比べここら辺の入力処理が多くなったなと最近思う。

(よし!処理…終了っと)

全ての受信処理を終了し、ウインドウが開かれるのを待つ。流石にここら辺の作業はなれたものだ。

「………こちら時空管理局、本局古代遺物管理部、機動六課管制室です…。」
『こちら、聖王協会 シャッハ・ヌエラです。…お久しぶり…シャーリー』
「ああぁ、シャッハさん!?ホントーお久しぶりです!」
『…ってシャーリー…あなた…』
「ほへっ?」

なにやら、モニター越しのシャッハが呆れ顔で溜息をついている。
訳がわからず首を傾げると、モニター越しにシャッハは自分の口元を指で指し、片眼を瞑り、苦笑する。

『口元…チョコレート付いてるわよ…待機中とはいえ、管制室での飲食は禁止のはずじゃなかったっけ…?ねぇ、シャリオ・フィニーノ通信主任様?』
「ひやぁ!?」

慌てて口元を掌で隠す。しまった…。一人であることを好機とし、一人ポッキーなる菓子をパクついていた事の足がこんな所で付いてしまった…。まじゅい…これは非常にまじゅい…。

「あのぉ~出来れば御内密にぃ~」
『はいはい…』

苦笑交じりに呟きを返すシャッハ。友人である彼女との通信と言う事が不幸中の幸いか…。どうやら、八神部隊長より『愛あるお仕置き』は受けずに済みそうだ。あれは…辛い。何処に愛があるの!?とつっこみを入れてしまうほど辛い…。石化ってね…本当に怖いんですよ…。

「ありがとう…でっ?今日は、どうしたんですか?」
『あ、ああ…えと…実はね…』

気を取り直して、本題へ移る。すると、私の問いかけに、突如視線を逸らすシャッハ…。

(あぁ…これは…なんと無く状況が読めたような………)

それ程付き合いは長くないが、彼女があんな顔をして目線を落とした時は大抵…

『ぴこっ!ぴこっぴこっ!!』
『あぁあもう、入っちゃった~私スイッチ入っちゃったわよぉ!さてっ!今日のテーマは『女王様』!……と言うことで…行きなさい!我支配下にある犬畜生よ!そこでのたうち回る愚かな弟の顔を、思う存分舐め回して差し上げなさい!』
『ぴこ~~♪』
『なああぁあー!ポ、ポテト!!やめっ!恩を仇で返すとは何事だ!!カリム姉さんが面白がって綿飴作成機の中にぶち込み、『なんだか解らない大きな雲』と化したお前を助けてやったことを忘れたのかぁ!?くっ!?所詮は犬………いや…お前は犬なのか?カリム姉さんじゃないが、明らかに綿飴の集合体のようにしか見えんのだが…。…まぁそれはともかく…ナスティ!おい、ナスティィ!!』
『なんですか?マスター…朝から騒々しいです…勘弁してくださいよ…昨夜は朝まで深夜アニメリアルタイム視聴でろくな休息をとってないんですから…その後も、フリードリヒと『朝4時放送アニメは果たして深夜アニメと呼べるのか?』をテーマに夜通し討論してまして…ですので…即刻睡眠を要求します…』
『デバイスが睡眠を求めるって…常識的にどうなんだろう…いやそうじゃなくて!そんなことは後回しだ、ナスティ!今日こそこの金髪悪魔に一泡吹かせるんだ!早く来い!』
『騎士カリムに?…マスター…?マスターも知ってるとは思いますが、立場上私、騎士カリムに手を出すとまずいというか…下手すると封印処分とかも在りうるので…そこまでのリスクを負うのはちょいと…なによりタルイ…』

モニター越しに移るシャッハの背景が目まぐるしく変化する。
突然、戦隊物張りの爆風が起こるのは序の口。飛び交う閃光。怒涛の口論。しまいにはなにやら人なんかも飛び回っている。相変わらずデンジャーな人たちだ。あれ?フリード?さっきまでキャロの隣飛んでなかったっけ?

「いつもながら、賑やかだねぇ~」
『…………それでね……八神部隊長なんだけど…』

どうやら、私の返答にうまい返しが見つからなかったらしく、苦笑した後、何事も無かったかのように話を再開した。

「ん?八神部隊長なら結構前にそっちに向かったよ?フェイト執務官の車で…ん~かれこれ一時間くらいじゃないかな~まだ到着してないの?」
『えぇ…時間には正確な人だったから、ちょっと気になって…というか…後ろの方々が騒ぎだして…』
「なら此方で通信取って…」

『ならば!シャッハより没収した『誰とは言わぬが金髪黒浴衣少女等身大抱き枕』を進呈しよう!それに『誰とは言わぬがツインテールを介した白い悪魔1/8スケールフィギュア』!ええぇい使うかどうかは知らんが、『何処とは言わぬが某管理外世界有名私立小学校指定制服』もつけよう!!』
『騎士カリム!貴方とは、一度本気で戦ってみたかったぁ!』
『煽っといて難だけど、一デバイスとして、それで良いのかナスティ!?』
『男には…戦わなくちゃいけない時があるんだ!それが今!破壊!?封印!?だからどうしたぁ!!ここでこの悪魔に勝利を収め、忌まわしき過去を清算するのだ!!』
『言ってことは格好いいのに…何故だろう…物凄く薄っぺらいというか…嘘っぽいというか…』

そんなBGMが高々に響いた瞬間、もうモニターには誰も映しだされてはいなかった。
流石ベルカの騎士。早いなんてものじゃない…体の動きを眼で追いきることが出来なかった。確認できたのは、青ざめた顔と引き攣った頬を伴う『真剣』と書かれた表情だけだ。

『ちょっ、話が違います!猶予期間を完遂すれば返却していただけるとっ!?あ、あれが一体どれほど貴重かわかっているのですか…!!』
『君の犠牲は無駄にしない……』
『まっ!マジで言ってるんですか!?冗談じゃない!!あれを手に入れる為にどれほどの血と汗と涙が流れたか知っているのですか!!あれは忘れもしない夏の祭典二日目!意気揚々とブースに続く行列へ並んだまでは良かったが、そこで明かされた驚愕の事実!一日目に殆どの商品を捌かれ、残ったのは、極僅かの限定商品とサウンドトラックCD!我々は怒り狂いました!そして、戦いました!ええ、戦いましたとも!その僅かの限定品を巡って!!苦渋の表情を浮かべ、背負っていたリュックに刺さっているポスターを抜刀する者!号泣しながらに購入した紙袋を盾にする者!黄ばんだ歯を煌かせながら所持カメラからビームを放つ者!意味不明な暴言を吐きながら飛び回る白い竜!そんな同胞達と私は戦った!主に拳で!!どれだけの血が!涙があぁ!…ううっ…思い出しただけでも涙が溢れる……そんな、数々の屍を乗り越えて、やっと手に入れたアイテムをそんなオタクデバイスにですと!?そんなことになったら、散っていった同胞達に申し訳が立たない!!』
『なんだその規格外な世界は…?あんなものを巡って戦いが?う、嘘だろ?』
『マスター…貴方は知らないのです…その昔…』
『ナスティ?』
『ある祭典で…整理券が配られたのです…番号は『1192』。私は叫びました。『鎌倉幕府かよ!!』っと。特に意味は在りません…』
『ないのかよ!?っていうか何?『鎌倉幕府』って?』
『私は整理券片手に、心躍らせました…。私にとってそれは未知の冒険だったからです…。だが、そんな淡い期待はものの五分で崩れ去りました…。あの女装メイド服男によって!!』
『どんな場所だよ…女装メイド服って…』
『そのメド男(女装メイド服男の略)はメガホンを口にあてこう叫んだ。『限定品は極僅か!サウンドトラックCDも現在整理券を持ってる方々分くらいしか在庫がありません!!』とっ!』
『オタデバ(←オタクデバイスの略)……あなたも、まさかあの場所に?』
『えぇ…いました…私も戦ったんですよ…。だがしかし!!私は敗北したっ!!というかこの手袋の様ななりで、ヒューマン型に勝てるかあぁあぁ!?ああぁ、踏まれたさ!何度も何度も!!やめてって叫んだのに!!あの豚どもは…挙句の果てに私の上へと次々と倒れてくる始末!』
『オタデバ………』
『いやシャッハ?そんな悲壮感漂わせる表情をするような話か?どちらかと言うと笑いを誘うと思うぞ?』
『中央部を司る私のコアには亀裂が入り、内部魔力神経も異常をきたしました…3週間…完治するまでに3週間ですよ!!その間私がどれほど悔しかったか!惨めだったか!!マスターにわかりますか!?頼みの綱だった竜族のフリードも、何処か赤毛少女にジャイアントスイングを見回れ西から東へと飛ばる始末…………』
『………。(あっ…それ多分私だ…)』

さて、放置されて私は一体どうすればよいのだろう?個人的には、騎士カリムが何事も無かったかのように執務室に腰掛、仕事を再開しているという点が物凄く気になるのだが・・・。それとやはり、今まさに、『ポテト』と呼ばれていた犬(?)に頭から被りつかれているのは家のフリードじゃないかと思うのだがその辺はどうなのだろう…。



「も、申し訳ありません。騎士はやて…ただいま騎士カリムの執務室を修繕しておりまして…もう少々お待ちください!」
「はっ?」

予定より遅れて到着したはやてを待っていたのは、脂汗を浮かべた作業服姿の黄色いヘルメットを被った中年男性だったという。
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