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グラシア・ブラザーズ・ライフ♪ #7

2008年05月27日 21:50

#7
彼を、初めてその瞳に捕らえた時、心臓が止まりそうな程の衝撃を受けた。
それは、いつもとなんら変わらない休日。あの日…高層ビルの屋上…白髪の少年と明るい茶髪の少女…『少女自殺未遂事件』…それが…切っ掛けだった。

『からっぽなの!もうなんにものこってないの!もぉう…やぁああだぁあ…たたかれるのも…むしされるのも…やくたたずって…うあぁあぁああーおにいちゃあぁあん!!』

似てる…。

『だったら…強くなればいい…証明すればいいんだ…君のお兄さんは…本当は凄い人なんだろ?今この時、それが出来るのは君しかいないんだぞ?』

姿形は勿論、その穏やかな瞳が…不器用な優しさが…少女の頭を優しく撫でるその姿が…

『僕が、手を貸す。ここまで首を突っ込んでおいて『さよなら』ってのも、後味悪いしね。それにこれは、トップシークレットなのだが…そこらへんの技術を教授するという事に関しては、ちょっと自信がある。任せてくれて良いよ…』

幼かった私達を、守り、傷つき…そして…消えてしまったあの人に…

『僕?んっ…………プラクティス…うん…プラクティス・グラシアだ。さて、それでは、プリンセスのお名前は?』
『……ひくっ……てぃあな…ひくっ…らんすたー………』

髪の色も違う、年齢だって計算が合わない…だけど、ただ漠然と…そう思ってしまった…。
あの人に似てるって…



否定された。
蹂躙された。
何か良くわからない筒の中に入れられた。
舌を噛もうとした。
電気で気絶させられた。
くちに何か入れられた。
『それを殺せ』といわれた。
『嫌だ』とこたえた。
『おまえのせいでしんだんだ』といわれた。
ここにきてはじめてなみだをながした。
つつからだされた。
しろいへやにつれていかれた。
あたまをいじられた。
はりをからだじゅうにさされた。
まほうがつかえなくなった。
ひだりうでがなくなった。
とりあえずさけんでみた。
むなしくなった。
かみのけがしろくなった。
こえがでなくなった。
もうなにもかもどうでもよくなってきた。

『…………家族になりましょう?』

そういってくれた人がいた。
もうあのばしょへもどれない僕とかぞくになってくれるって人達がいた。
さいしょは信じられなかったが、僕はその人達のてをとった。
だってこの人達は、とても優しい人達だから…。
ぼくのために涙をながしてくれたひとたちだから…。
『あね』ができた。『あに』ができた。そして少したって、『いもうと』もできた。こうなったら『おとうと』もほしくなってきた。

『…ティア?…実はそのツインテール取れたりしないの?』
『あんたのポニーテルは取れるのか?えぇシアお嬢様?』
『………うん』
『うんっ!?』
『あらあらティアナちゃんったら…ツインテール取り外しも満足に出来ないなんて…そんな娘に育てた覚えはありませんよ!』
『えっ!私!?私がおかしいの!?』
『君たちの会話を聞いていると異次元にでも迷い込んだ気になるな…。なぁ?『ロリ』クティス。』
『おいっ、ロッサ!貴様、さらりと僕を侮辱しなかったか!?それと語呂が悪いにも程があるぞ!無理やりやってるだろ!?』
『それは自覚があるって事じゃないのか?…『ペド』クティス』
『はっ…ははっ!!ナスティ…『CODE-3-グラディウス』及び『CODE-5-S2U』発動…。 』
『…『3』と『5』って…あ、あのですねマスター?あからさまな挑発にそこまで熱くならんでも…』
『主が主なら、デバイスもそれに比例する…か…ふぅっ…』
『オタク馬鹿にすんじゃなねぇよっ!!マスター!!あれやりましょあれ!この前練習してた奴!『クトゥ○ア!』『イタ○ァ!』って奴!!』
『よし!ならば、『CODE-3-グラディウス』改め、『CODE-7-デュランダル』発動!』
『サーイエッサ!!』
『ふぅー…紅茶がおいし…今日も平和ね~』
『えっ!何処が!?』

騒がしい日々…昔を彷彿させる様なそんな騒がしくも充実した日々。
徐々に自我が戻っていくのが解る。

カリム姉さんがいる。
ロッサがいる。
ティアナがいる。
シアがいる。

嬉しかった。僕の新しい『日常』ができたことがただ嬉しかった。
だから、最近良く考える。こんな弱い僕だけど…僕はまだ、『人間』でいいのかも知れない…と。

守ろう…。この人達を…。これから続く幸せな『日常』を…。………今度こそ。
そう…思ってたのに…

『設立して間もない部隊、本出動もまだ無い…。登録は陸士部隊。ロストロギアの捜査、保守管理が主な仕事や。うちが部隊長勤める『古代遺物管理部機動六課』。』

やめてくれ…

『その陸戦フォワード部隊。現在新人として四名がチームを組み既に家の教導官の元で訓練を開始しとる。そして、そのフォワード部隊のリーダーとして、君のその力を、借りたいんや…』

僕は…もう戻らない…。戻れない…。戻りたいなんて思っちゃいけない…。

『どうやろうか?プラクティス君…』

何故だろう?君にその名で呼ばれると酷く胸が痛いよ………なぁ?…………はやて…。



「ティス君っ!上!」

甲高い少女の叫び声が、閉鎖空間に響き渡る。現状を分析。走行中、突如真上から身の丈ほどの大岩が落下を確認。繰り出した右足に力込め、必要最小限程度に進路を右にずらし、それを回避。背後で『ずどぉーん!』と鈍い音が、耳に届いたのと時を同じくして、今度は、前、右上、左後から、誘導魔力弾を感知。被弾予測順は、距離から考えて右上、左後と続き、最後に前方。先程の回避運動の名残がまだ残る体制で、回避方法の解析、検索…。

(解析……………終了…現状では三方向全ての回避は不可能…単純な放出魔力砲ならばまだしも、出力を抑えた誘導弾、回避は困難…ならば…)

瞬時に右手に嵌められた漆黒の手袋、正確には、その中央に備付けられた、クリアブルーのコアクリスタルに魔力を通し、迎撃用魔力弾を作成する。選択魔法は、スピード重視。威力を抑えあくまで『迎撃』の為イメージするそれは、青白い三つの刃。脳裏のそのイメージと術式を組立てが終了し、自分身を中心に三つの刃が生成される。

『Stinger Ray』

指をパチンと鳴らし、ボソボソと呟き程度の、トリガーボイス。その間も前に進むのを忘れない。そろそろ、『日替わりお約束トラップエリア』だ。ぐずぐずしてられない…。振り返らずに、魔力反応で、全弾迎撃成功を認知。問題ない…このままいける…そう頭の中で思考を巡らせ、光も届かない、漆黒の闇に支配された洞窟を、目的地を目指しひたすら走る。

(あと、2kmって所かなっ?ふぅ…それにしても…)

ふぅと息をつき、胸に手を当て考える。最近、まったりとした平穏が続いせいか、『死』という領域に、片足突っ込んでるこの状況に、何処と無く高揚感を感じる…。そんな馬鹿なと思うが、やはり自分は戦う者なのだといことなのだろうか?そう考えると、どうにも否定したくなってくるが、無意識に緩む口元や、胸の高鳴りを感じる限りは、自分はこの状況を楽しんでいるらしい…。…自分の事だが、正直よく分らない。

「認めたくないものだな…若さ故の…」
「きゃあぁあああ!!ティス君!ティス君!うしろぉ~!?なんか後ろから転がってきたぁあ!?さっきの猪さんどうなったん!?」
「あぁ~あれですか?特殊センサーに引っかかると大丸岩が転がってくる伝統的トラップですよ。今日はあれが来たか…ねぇ八神さん。あれ丸く削ったの僕なんですが…どうでしょう?なかなかの出来でしょう?(←ちょっと得意げ)。…それと奴等の心配は要りません。今の僕ら同様、毎日の様に、あの洗礼を…」
「いやぁああああ~!?来る!岩が来るぅ!!」
「聞いてませんね…」

僕の前方1mほどの距離をおき走り続けていた八神さんが謎の轟音に振り返り、必死の形相で騒ぎ立てる。この洞窟に入り始めて約一時間、八神さんは終始叫びっぱなしだ…。



「にゃぁあ!?ティス君!?なんか前方に猪の群れがぁ!!!」
「えっ?あぁ…」

ゴツゴツした地面を器用に走り抜ける八神さんが、妙な悲鳴を上げて前方を指差す。そこには、確かに公言道理、12,3匹に及ぶ、猪が好き勝手に戯れていた。ある猪は、何故か一心不乱に地面を掘り進め、ある猪は、謎の綿飴犬とじゃれあい、ある猪は何故か岩場の隅っこでぶるぶる震えている。あぁ…あれは連れてこられて間もないんだな…恐怖心が抜けていないのだろう。

「…そのまま走り抜けて大丈夫ですよ。彼等この洞窟を縄張りにする『シヤアイ』(命名:カリム・グラシア)という新種族なのですが、きわめて温厚…温厚?…従順?…まぁ、身の程をわきまえてるというか、とりあえず好戦的な生物ではないので大丈夫ですよ。」
「何故猪が…!?」

それは、当然の疑問だろう?実際僕も、実物を見たのは、この場所が初めてだ。
するすると猪の群れをすり抜け、後ろを振り向く。やはり、危害を加えようとはしない。これもシアとカリムの『教育的指導』の賜物だろう…。『調教』とも言うが…

「牡丹鍋が食べたいと漏らしたら、シアが捕まえてきました。」
「ちょっ…!?」
「ちなみに『シヤアイ』とは、『シアに、敗れた、哀れな、猪』の略だそうです。」



なんだか…楽しいな…。



先程から、八神さんは事があるごとに僕を呼ぶ。
『なんでただの洞窟にトイレがついとるの!?』とか『なにあの看板!?『にゃんにゃんパラダイス』!?き、気になる!?』等の疑問を投げかけられるが、一々説明している時間も無いので、『そういう場所なんですよ~ここ♪』とさわやかスマイルで誤魔化している。

「ティスく~ん?…あれ…何?」
「えっ?今度はなんですか?」

八神さんが指差すのは、自立稼動を続ける、丸みを帯びた縦長の汎用機械。僕作訓練用試作機『どうぞ、お殴り下さい君』だ。倉庫にしまっておいたはずなのだが、またシャッハかシア辺りがストレス発散に持ち出したのだろう…。

「あぁ、あれは、僕が修理した訓練用の玩具ですよ。この間の遠征時、突然あれが襲い掛かってきまして…その時は、シアが完膚なきまでに破壊したんですけど、『そのつぶらな瞳が素敵っ!!』とか訳のわからない理由で、シアが興味を持っちゃって…遠征場所から拾ってきたんですよ。意外と精密で、弄繰り回したら、AMFも作動するようですし、主に、僕が相手の居ない時の訓練玩具として使用してたんですが…最近見ないと思ったらこんな所に…シアも使ったらちゃんとスイッチ切るように言ってるんですけどね…どうにもものぐさで…」
「あのねティス君…あれ…『ガジェット・ドローン』っていうんやけど知らない?お姉さんとかに聞いてない?」

なにやら、急に神妙な顔つきになった八神さんが、頬を若干引き攣らせながら、僕に問いかける。

「いえ?初耳ですねその名前…あぁ…それと言い忘れてましたけど、あれスイッチ入れっぱなしなら、センサー有効範囲内に入った瞬間襲い掛かってくるので…」
「おぅ!!なんか撃って来た!!って、ガジェットの何処に瞳があるねんっ!?」
「なんか、八神さんキャラ変わってません?ほら、どっから持ってきたか知りませんが、ハリセン仕舞ってください。」



なんだか…懐かしいな…。



「なんやねん!この洞窟!?ただの畑への道のりとちゃうんか!?」

遂に壊れ始めた八神さんが、更に喚き散らす。まぁ気持ちが分らないでもない。何を隠そう、僕が『ツッコミ専門』の不名誉な称号を手にする切っ掛けになったのが、この洞窟だったりする。だって…ツッコミどころ満載なんですよ?この洞窟…。

「落ち着いてください八神さん。口調が芸人風になってますよ?」
「はっ!ちゃっ!ちゃうねん!?私は、もうそんなボケキャラ卒業したんや!今を輝くシリアス部隊長さんとして…」(カチッ♪)
「…………八神さん…………」
「ううっぅ………ティス君…………私…なんか踏んでもうたぁ…」

ぴたりと動きを止める八神さん。振り返り僕に向かって『へるぷみ~』と泣きながら訴えかける。まったくこの人は、凄いんだか凄くないんだか…

「ほらほら、泣かないで…それにしても…あれ?もう地雷源ですか?おかしいなぁ…この道順でいけば、次は…」
「な、なんでそんなに…落ちついとるん?」

何故?何故だって…そんなの決まっている…僕がここに来て一体何度この洞窟に入ったと思っているんだ?何度黒焦げにされたと思ってるんだ?何度、泣き叫んだと…

「……………良くも悪くも…慣れましたので…」



と、ドタバタ劇を繰り広げているのにも理由がある。
そう、今この時、野菜栽培エリア:別名『シア畑』へ続く、唯一の道『シア畑への試練』という、シアとカリム製作のダンジョンを八神さんと攻略しているのにはちゃんと訳があるのだ…。

バリアジャケットの胸ポケットに刺さる一枚のカードを翳し、再び眺める。そこには…

『ファーストミッション:シア畑に赴き、『シアイモ』を奪取せよ(無許可で)!』

と無常に記されていた。
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